アルミ缶の上で樽未完

そこら辺のいちゲーマー/TCGプレイヤー”たるる”のメモ的な何か。所属コミュニティ「パンデモMTG部」の身内MTG大会「パンデモ杯」についてもあれこれ。

デッキテク:『タイタン・ポスト』(第38回パンデモ杯優勝)

“マジックで一番大切なものは、マナだ。”

 

たとえ君がどんなに偉大なプレインズウォーカーだとしても、呪文を唱えるにはマナ(また時には幾つかのライフ)が必要となるだろう。

だがマナさえ用意できるのならば、君は自由だ。1マナで唱えられる手品のような呪文から、10数点のマナを注ぎ込み顕現する強大なクリーチャーまで、多元宇宙のありとあらゆる力を、堂々と扱うことができる。

 

では、どうやってマナを用意しようか?

 

これは流石に愚問だったね。土地を置こう。

山セット、これで1マナだ。次のターンに森を置けばの2マナ、次いで島を置けばも加えて3マナとなる。

…というのが、普通のスピードだ。

土地1枚から1マナ?そんな素直なことをしていては、10マナを目指してただただ土地を置いている間に、ゲームに負けてしまう。

 

 でも、もし1枚で2マナの出る土地があったら、どうだろうか。

例えば1ターンに2枚の土地を戦場に出せるなら、圧倒できるのではないか。

 

かつて、SF作家ジュール・ヴェルヌは言った。「人が想像することは、必ず人が実現できる」と。

 

そうだ、出来るのだ。

1枚で2マナ、いや3マナの出る土地があり、

ライブラリーから好きな土地を戦場に出す呪文があり、

たった1枚で勝負を決定づけるほどの、強大なクリーチャーがいる。

 

マジックでは、僕たちはそれほどに自由だ。

 

前置きが長くなってしまったが、それでは紹介しよう!

第38回パンデモ杯(レガシー)、栄光の優勝を飾ったデッキはこちらだ!

 

 

にたごんの『PCNポスト』(PCN・・・「パワーチャンプにたごん」の略)

 

クリーチャー:8
1:《粗石の魔道士/Trinket Mage》
1:《ムル・ダヤの巫女/Oracle of Mul Daya》
3:《原始のタイタン/Primeval Titan》
1:《世界を壊すもの/World Breaker》
1:《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》
1:《絶え間ない飢餓、ウラモグ/Ulamog, the Ceaseless Hunger》

呪文:26
1:《撤廃/Repeal》
4:《輪作/Crop Rotation》
1:《クローサの掌握/Krosan Grip》
4:《意志の力/Force of Will
4:《渦まく知識/Brainstorm
1:《風景の変容/Scapeshift》
1:《全ては塵/All Is Dust》
2:《真髄の針/Pithing Needle》
4:《探検の地図/Expedition Map》
1:《魔術遠眼鏡/Sorcerous Spyglass》
1:《蜃気楼の鏡/Mirage Mirror》
2:《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》

土地:26
2:《島/Island》
2:《森/Forest》
4:《微光地/Glimmerpost》
1:《イス卿の迷路/Maze of Ith》
2:《ヴェズーヴァ/Vesuva》
4:《雲上の座/Cloudpost》
4:《霧深い雨林/Misty Rainforest》
1:《Gracial Chasm》
3:《Tropical Island》
1:《ボジューカの沼/Bojuka Bog》
1:《カラカス/Karakas》
1:《ウギンの目/Eye of Ugin》

サイドボード:15
2:《狼狽の嵐/Flusterstorm》
2:《計略縛り/Trickbind》
1:《クローサの掌握/Krosan Grip》
4:《実物提示教育/Show and Tell》
4:《虚空の力線/Leyline of the Void》
1:《Candelabra of Tawnos》
1:《魂の洞窟/Cavern of Souls》

 

 

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『12ポスト』というデッキをご存じだろうか?

戦場の「神座/Locus」の数だけの無色マナを生み出す《雲上の座/Cloudpost》を用いて、《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》や《絶え間ない飢餓、ウラモグ/Ulamog, the Ceaseless Hunger》を唱えるビッグ・マナ系のデッキだ。

《雲上の座》2枚で2×2の4マナ、3枚で3×3の9マナと、モダン環境におけるウルザランド(こちらは3種揃って初めて7マナ)よりも圧倒的にマナの伸びが速い。

そして、《雲上の座》4枚に加えて、《微光地/Glrimmerpost》4枚、そしてどちらかのコピーとして戦場に出た《ヴェズーヴァ/Vesuva》4枚で、計12枚の「神座」が積まれているので、12ポストと呼ばれている。(どうしてか、12ローカスではない。語感だろうか。)

 

とはいえ、これら12枚を投入したとしても、そう都合よく「神座」をたくさん引き、戦場に置けるとは限らない。

そこで緑を足し、《輪作/Crop Rotation》や《原始のタイタン/Primeval Titan》を用いてライブラリーから直接「神座」を戦場に集めてしまおうというデッキが、この『タイタン・ポスト』だ

 

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《輪作》は追加コストとして土地1つを生け贄にしなくてはならないため、《雲上の座》を持ってこない限りはマナ加速にはならないが、たった1マナでライブラリーから好きな土地1枚を持ってくることができる。まるで季節に応じて作物を変えていくように、《イス卿の迷路/Maze of Ith》や《Gracial Chasm》などの1枚挿しの土地を好きなタイミングで戦場に出せるため、こちらのマナが伸びるまでに起こりうるいろんな局面に対応しやすいだろう。

少しの「神座」が揃い6マナに達したら、今度は《原始のタイタン》の出番だ。

 《輪作》では伸ばしづらかったマナを、《原始のタイタン》がもりもりと伸ばしてくれる。《雲上の座》2枚でマナブーストするもよし、《微光地》でそれまでに減らされたライフを回復するもよし。《ウギンの目/Eye of Ugin》を持ってくれば、そのまま増えたマナで能力を起動し、《絶え間ない飢餓、ウラモグ》まで一直線。相手はタイタンに対処しなければならないのに、ウラモグまで見えているという絶望の淵へと堕ちることになる。

 

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《原始のタイタン》の4枚目の枠を、《風景の変容/Scapeshift》にしているのは、にたごんのおしゃれな構築ポイントだ。モダンの『ヴァラクート』系デッキでおなじみのこのカードは、いわばハイパー《輪作》。手札にすでにフィニッシャーがいる場合は4ターン目に全ての土地を生け贄に捧げ、《雲上の座》3,4枚を持ってくれば良い。特に《微光地》の誘発は、戦場に出たタイミングの「神座」の数を参照するため、複数枚を同時に戦場に出せる風景の変容》は、《輪作》・《原始のタイタン》では出来ない大量ライフゲインも可能とする。

 

前述したように、通常は《雲上の座》4枚・《微光地》4枚・《ヴェズーヴァ》4枚の「神座」12枚体制で組まれることが多い。しかしライブラリーから直接持ってくることに重点を置いたにたごんの「タイタン・ポスト」は、《ヴェズーヴァ》が2枚に抑えられている。

その代わりに、11枚目の「神座」ともいえる《蜃気楼の鏡/Mirage Mirror》の採用が、なんとも興味深い。

 

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タップせずに土地のコピーになれる《蜃気楼の鏡》で《雲上の座》をコピーすることで、瞬間的にマナを増やすことができる。コピー元は自分のコントロールするものに限られていないので、相手のクリーチャーをコピーしてブロックし相打ちに持ち込んだり、状況に応じて多彩な役目が与えられるだろう。

 

「神座」を並べ、《雲上の座》から大量のマナを引き出し、重量クリーチャーを叩きつける。ということは、「神座」が並ばなければ、このデッキは機能を停止してしまう。

レガシー環境を定義する3枚のうちにも数えられる《不毛の大地/Wasteland》は、まさに天敵

決して遭遇率の低くない《不毛の大地》に立ち向かうため、メインボードから《真髄の針/Pithing Needle》・《魔術遠眼鏡/Sorcerous Spyglass》が採用されているのは、必要経費のようなものだろう。《魔術遠眼鏡》は相手の手札を見ることもでき、《原始のタイタン》着地の前方確認にもなる。

 

同じく、遭遇率こそ《不毛の大地》ほどではないものの、特殊地形を扱うデッキへの対抗札として意識しなければならないのが《血染めの月/Blood Moon》だ。緑色のデッキでは、《クローサの掌握/Krosan Grip》で対応することが多いが、そこは折角のビッグ・マナ・デッキ、少し重いクリーチャーで対応しようではないか

 

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《世界を壊すもの/World Breaker》は1マナを含む7マナと、このデッキの他のクリーチャーと比べると、《血染めの月》の影響下でも召喚しやすい。そして「唱えたときの誘発型能力」によって、《血染めの月》を始め、様々な置物に対処できる類まれなクリーチャーだ。5/7というサイズと到達は《グルマグのアンコウ/Gurmag Angler》や順応後の《プテラマンダー/Pteramander》を止めることができ、《血染めの月》を置いてこない相手に対しても隙が少ない。

 

青がタッチされているのは、レガシーが誇るドロースペル《渦まく知識/Brainstorm》と、レガシー定義その2《意志の力/Force of Will》のためでもあるが、一番の理由はなんといってもサイドボードの《実物提示教育/Show and Tell》だろう。

 

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速いコンボ・デッキやアグロ・デッキに対しては、悠長に畑を耕している暇はあまり無いため、こちらも迅速な《原始のタイタン》着地が求められる。たった3マナで《原始のタイタン》を戦場に出し、さらにライブラリーから2枚の土地を戦場に出せるとなれば、相手の場に土地が1枚増えたり、ひ弱なクリーチャーが1体増えたところで些細な話。

このデッキを熟知していない相手からしたら警戒しづらいという、アグレッシブ・サイドボーディング的な側面もある、ナイスサイドだ。

 

 

ちゃんとマナを払って《絶え間ない飢餓、ウラモグ/Ulamog, the Ceaseless Hunger》や《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》を唱えるのは、多種多様のデッキがあるレガシーといえど、無限マナ・コンボ以外ではこのデッキくらいだろう。

スタンダードでは味わえない、この大迫力のビッグ・マナ・デッキ、いかがだっただろうか。

 

 

次回パンデモ杯は5/11、フォーマットは満を持して発売となる『灯争大戦』シールドだ。興味のある方は、@talru_c | TwitterパンデモMTG部 (@PandaemoniumMTG) | Twitterまでお気軽に。